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アイリッシュコーヒー


 
 
その店に出会ったのは10年前。
 
“word famous IRISH coffee”と書かれたガイドを見て行ってみたのは「ブエナビスタ」という名の店だが、
SFにありがちな建物に入ったBAR&Restaurantで、最初に訪れた時は昼だったために
お目当てのアイリッシュコーヒーを出してもらえず、それを飲みたいが為に1日に2回も訪れる事になった。
http://wakao.info/text/09/437.html
 

 
え?
こんな上品な飲み物じゃなかったよ・・・?
 
店はまだ午後だと言うのにかなり混んでいて、
空いたテーブルに強引に座り、アイリッシュコーヒーをオーダーしたのだが、
出てきた物は10年前に楽しんだ物とはまるで違う物だった。
 

 
なんとなく納得がいかないまま、このアイリッシュコーヒーを飲んでみる。
 
すると・・・
あの少しパワフルなアイリッシュコーヒーの味わいが、
この上品なものにもちゃんと有る事がわかった。
 
これがアメリカ発の元祖アイリッシュコーヒーか・・・・
と思いつつ、メニューや資料を読むと、興味深い事が書かれている。
 
1952年にこの店のオーナーがアイルランドのシャノン空港で飲んだコーヒーにヒントを得て、
美味しいアイリッシュコーヒーを作るべく研究を重ね、そしてホイップクリームをフロートする
スタイルを確率した・・・・
 
え?
じゃぁ、ホイップクリームをフロートするスタイルは、このブエナビスタが始めたの??
 
バーでオーダーするアイリッシュコーヒーは、この形で出される事が多いが、
正統なやり方として伝わっていたのか・・・と理解したとともに、
10年前に出会ったアイリッシュコーヒーは何だったのか?
という疑問も湧いてきた(^_^;)
 
ただ・・・
作り方を見ていると、火を点けてアルコールを飛ばすような事はしていない。
 
手順としては、
お湯によって6オンスのゴブレットを温め、
3/4コーヒーを注いだ後に角砂糖を2つ入れ、
かき混ぜた後にアイリッシュコーヒーを1ショット入れ、
その上に緩く立てたホイップクリームをフロートする・・・
のが、この店のやり方だ。
 


 
ケーブルカーの発着所に近いせいもあって、観光客がどっと押し寄せて、
席は空いた所へ相席当たり前の感じで埋まっていく。
 
喧噪を何故か心地よく感じながら、10年前にこの店で出会ったアイリッシュコーヒーの事を考えてみる。
 
あ・・・・
そうか・・・・
 
ふっと気付く。
 
あの夜、この店でアイリッシュコーヒーをオーダーした時、
席が無いから・・と断られたのを強引にお願いして作ってもらったのだが、
その時バーテンダーが言っていた言葉の中に、
このスタイルの物は作れない・・というメッセージも入っていたようだ。
 
だから、ゴブレットじゃなくてタンブラーを使い、
ホイップクリームも無いゲーリックスタイルの物が出されたのだろう。
 
そして店の外で飲んでいる人達のアイリッシュコーヒーは全てその形だったから、
それがこの店のオリジナルだ・・・と勝手に誤解してしまった・・・らしい(^_^;)
 
これはこういう物だ・・・と理解するには時間が必要だという事を、
こんな歳になって思い知る。
 
どうやらこの旅は、
そういう意味を持ったもの・・・らしい。
 
 

the BUENA VISTA san francisco
 
2765 Hyde Street(at beach)
San Francisco,CA 94109
Tel:415-474-5044

老上海茶館

水の不味い上海で美味しく水を飲むには・・・
茶しかない(^_^;)
 
と単純に考えていいのかどうかわからないが、
茶芸館を探してウロウロとすると土産物屋の2階にちょっと小綺麗な店があった。
 

 

  
年配の奏者が操る胡弓の調べを楽しみながら、
味の濃そうな安渓鉄観音をオーダーする。
 
この店ではお茶もなかなかの値段で日本の茶芸館並となっていたが、
その分期待も大きくなる・・というもの。
 
産地が近くて、特に外国人相手の店でなくてこの値段(1000円相当)なら、
かなり美味しい事は想像に難くないのだ。
 

 
店員が一杯目をちゃんと淹れてくれる。
 
作法としては台湾のやり方に似ていて聞香杯で香りを楽しむ事もできたが、
あの不味い水のはずなのに、豊かな香りと味わいが生まれるのが不思議だ。
 

 
これで水が美味かったらなぁ・・・(^_^;)
 
と思いつつ、お湯の追加を頼むと、
何故か味が違う。
 
あれ・・・?
なんかさっきより美味い??
 
どうやらこの、いつの物だかわからない
古いポットのお湯が違うらしい・・・
 

 
できる事なら、日本から持ってきた飲料用のミネラルウォーターで飲みてぇぇぇ・・・と心の中で叫びつつも、
多分何度か暖めて時間がたったこのポットのお湯が、想像以上に鉄観音の味を引き出していたから、
いつの間にかすっかりとリラックスできてしまった。
 
で・・・
落ち着いてくると・・腹が減る(爆)
 
フードメニューを見るとちゃんと点心があるので、
ここでも懲りずに小龍包をオーダーしてみた。
 

 
 
・・・・・
 
美味い・・・じゃないすか(^_^;)
 
高級店より遙かに安いのに、
こっちの方が数倍美味い・・・・じゃないですか(/–)/
 
なんかこの街、安い一般市民が食べる食べ物の方が、
美味しいのでは?・・・と勘ぐりたくなるほ、この小龍包は美味かった。
 

 
窓の外には、古き良き時代の建物と建築中の高層ビルが見える。
 
昭和の時代、街がどんどん姿を変えていく様を見ながら育った私にはどこか懐かしい空気を感じられるが、
それでも、古い町が飲み込まれないように・・・と祈らずにはいられない。
 
何故なら私が生きている横浜は、都市開発という破壊によって、多くの「らしさ」を失ってしまい、
今ではどこの街だかわからないような顔を幾つも持っているからだ。
 
そして、歴史と経験によって育まれた文化は買う事ができない事を痛感しているからこそ、
文化を伝えるあらゆる物は、そこに生きる人間達の誇りの一部として大切にすべきと、考える。
 
でも・・・
そう言えるのも・・・
豊かな暮らしができている「今」があるから・・なのだが。
 

緑波廊酒楼


 
豫園は上海では有名な明時代の庭園。
「豫」は愉を示し「楽しい園」という意味があるが、観光地としてはあまりにも有名で、
今回はここにある「南翔饅頭店」で小龍包を食べるか「緑波廊酒楼」(国際特級レストラン指定)で
上海料理を楽しみたいと思っていた。
 
だが、「南翔饅頭店」には膨大な順番待ち客が並び、
時間を無駄にできないスケジュールを持つ私には、待つ・・という考え無い。
 
例え国際特級であろうとも、多少高くても、
まずは上海料理が食べられる事が大切なのだ(^_^;)
 

 
 
「No Table! Can you waiting?」
 
「Yes! How long?」
 
「fifteen minute Sir」
 
「OK」
 
 
ブロークンな英語で会話し、予約無しでも無事入店を果たすと、
メニューにあるオススメ料理を数点頼んでみた。
 

「椎茸と豚肉のパテ、パイ生地包み」
 

「芝エビの炒め物」
 
 
最初に出てきたのは緑茶。
 
香港と同じようにポットで出され、
注いでくれるのだが・・・
 
うわっ・・・不味(・_・、)
 
そう・・・
上海の水は思いっきり不味い。
 
例えて言うなら、凄く古いマンションの水道水のような、
独特な匂いがする水なのだ。
 
で、デリケートかつ薄く出された緑茶には、
思いっきり影響するわけで・・・(▼▼メ)
 
あわててウェイトレスを捕まえてビールをオーダーすると、
出てきたのがコレだった。
 

 
大きい瓶のビールをくれ・・と言ったら、初めて見る青島ビールのドラフト。
純生というラベルが笑いを誘うが、クソ不味いお茶よりは遙かに美味しい(^_^)。
 
パイ生地包みの点心と海老で、
楽しい食事が始まった。
(不思議な事に、料理は美味しい(^_^;))
 
しかしこの料理は凄かった・・・
 

「蠏肉と青梗菜の料理。」
 
 
カニや川魚料理が得意らしいこの店、
堂々とオススメ料理に載っているので迷わずに頼んだのだが、
さすがは野生の川カニ。
 
見事に川の香りが豊です。
 
暖かいうちはそれが良いアクセントに感じられたが、
冷えてくるにつれ、どんどん川の匂いが強くなり、
なんだか食べる事が辛くなってくるワケで・・・
 
でも、何かに似ている匂いなんだよな・・・・
と思いながら、ビールのつまみに無理矢理食べていて気がついた。
 
そうだ・・・
 
これ・・・
 
ペットショップの匂いだ(^_^;)
 
水槽が並び、亀とかトカゲとかもいるようなペットショップに存在する、
なんとも言えない動物の匂いがするのだ。
 
・・・と気付いたら、
もう食えません(・_・、)
 
残念ながら、完食できずに次の料理を待つ事にした。
 

「上海焼そば」
 
 
いや・・・
興味はあったんだよね(爆)
 
上海に上海焼そばがあるかどうか・・・・(^_^;)
 
 
で、メニューにしっかり上海炒麺と書いてあったから、
無条件に頼んでしまったワケで・・・・
 
 
コイツは、美味かった。
 
麺が太すぎるのと、何故か短い事を除けば、
かなり上品な焼そばだ・・と言える。
 
肉が麺と同じ太さで切ってあって麺に混じっているのが紛らわしいが、
横浜中華街の上海料理店で見た上海焼そばも同じように肉を切って入れていたので、
コレが正しい上海焼そばなのかも知れない・・と思った。
 
しかし・・・
水が不味い・・というのは致命的だ。
 
下手な店で薄味の汁物を頼んだら、
間違いなく不味い・・という事が想像できる。
 
そんな事にメゲル私では無いが、
中華街で慣れ親しんだ上海料理の方が美味いんじゃ、
洒落にならないじゃん・・・・としばし呆然。
 
だが・・・
そんな想像が必ずしも当たらないのが中国の面白いところ。
 
四つ足は机以外何でも食べる・・という位、食に長けている国の料理は、
様々驚きに満ちあふれていた。
 

 
緑波廊酒楼
TEL:(021)63557509
FAX:(021)63557507
上海市豫園路115号
07:00~10:00
11:00~16:30
17:00~00:30
年中無休

ホフブロウ


 
週末のブランチは、
ビールの飲める店で・・・と決めている。
 
中瓶一本飲めば、適度な気付けになるし、
食欲もそれなりに湧いてくるからだ。
 
だいたい蕎麦屋が多いのだが、ここのところ会社近くにある
昔通った店に行く事が多い。
 

 
荒くれ船員が集ったカウンターには嘘のように人気が少なく、
今は「スパピザ」という名で呼ばれるコイツもどことなく上品だ。
 
それでもここに来れば、コイツとビールをセット楽しむのが自分の中の決まりなので、
昔のちょっと危うい空気を思い出しながら、1人でジョッキを傾けている。
 
 
「そんなカロリーの高いモノ食べるから肥るんだよ!」
 
「うるせぇなぁ、食いたいモノ食うんだよ。」
 
「やめときな」
 
「だったらメニューに載せんなよぉ!」
 
 
名物ばあちゃんは、いつも恐かった。
 
レストランの主なのに、脂やチーズがコッテリとしたフードは、
身体に良くない・・・と説教する。
 
なんで怒られながら食わなくちゃいけないんだ・・と憤慨するヤツも多かったが、
それもこの店の味・・・と楽しんでいた事を思い出す。
 
ばあちゃんが死に、娘のママも姿を消したこの店は、
今では立派な観光地のレストラン。
 
早朝にホテルの飯が高いから・・と通うような船員や、
朝まで夜通し働いた人間達を暖かく迎えるモーニングセットは既に無い。
 
それでも・・・
やっぱりこのカウンターにある空気は、
横浜の匂いがする。
 

「ホフブロウ」
045-662-1106
横浜市中区山下町25 上田ビル1F
火〜金    11:30〜13:30 17:00〜21:30
土・日・祝 11:30〜21:30
月曜定休

ラ ブラスリー

ホテルの魅力とは、何だろう。
 
アメニティや食事、ホスピタリティ・・・
上げればキリがないが、非日常を演出する様々な要素が集まっている事が、
魅力のモトだと思っている。
 

 
 
「予約していないのですが、よろしいですか?」
 
「はい。
 お一人様で?」
 
「はい。」
 
「お煙草は?」
 
「吸いません。」
 
 

 
 
帝国ホテルには二つの直営フレンチレストランがある。
 
メインダイニングの「レ セゾン」とカジュアルフレンチの「ラ ブラスリー」がそうだが、
ワケあって1人でランチをする事になった私が選んだのは勿論「ラ ブラスリー」だった。
 
※ブラスリーとはビール醸造所、食事もできるビアホールという意味がある。
 
 
「お食事の前に何かお飲みになりますか?」
 
「では生ビールを」
 
 
別にブラスリーに引っかけて頼んだワケじゃない。
 
朝から何も食べていなくて、オマケに走り回る仕事を汗だくでこなしていたから、
とにかく喉が渇いていた・・・だけの事(^_^;)
 

 
 
え・・・?
 
なんか凄い量なんですけど??
 
メニューを見直してみると、生ビールはエビスでしかも500mlと明記されている。
 
1杯1000円オーバーのプライスが付いていたが、
量から考えるとホテルとしてはかなり安い。
 
いや、東京価格・・・という事を考えると、ホテルとしては凄く安い価格だと言っていい。
 
しかし、ランチの価格はやっぱり帝国ホテル価格で、ベーシックが3150円。
メインディッシュとサラダのみで3000円オーバーという設定に呆れつつ、
どうせ食べるならちゃんとしたコースランチを食べよう・・と5250円のスペシャルランチをオーダーした。
 
オードブル
スープ
牛フィレソテー赤ワインのソース
デザート
コーヒー・紅茶
 

 
 
正直言って、ホテルのレストランなんて・・・と思っていたが、
最初のオードブルのソースで驚いた。
 
ソースが妙に美味しいのだ。
 
フレンチはソースが命という言葉があるが、
ここの料理にはその言葉が当てはまる。
 
 

 
 
ウェイトレスがオーダーを取る時に、
セロリを使ったスープである事を確認した。
 
セロリ嫌いな人がそれだけ多い・・のかも知れないが。
 
 
え・・・・?
 
何だろう・・・この旨さ。
 
出しゃばりすぎない味付けの中に、
爽やかなセロリの香りがほのかに漂い、
もっと食べていたい・・と思わせる味わいだ。
 
そしてもう一つ驚いたのは、
さりげなく出されたパンの旨さ。
 
バゲットの皮のカリカリ感と中のモチモチした中にある軽い食感、
そしてバターを塗らない方が美味しいんじゃないか・・と思わせる旨さがある。
 

 
 
そしてメインの牛フィレがやってきた。
 
ありがちなスタイルの料理で、肉の量としては120グラム位か。
 
どれどれ・・・と食べてみると、
肉は普通のフィレ肉だったが・・・・
 
ここでもソースが素晴らしい。
 
 

 
 
デザートはワゴンから選ぶスタイルで、どれも目を引く物ばかりだったが、
オーソドックスなプリンを選んでみた。
 
基本がしっかりとしたレストランが作るプリンは、
かすかにバニラビーンズが見える香り良い逸品。
 
滑らかな食感としつこくないカラメルが、食欲を増進する(^_^)
  

 
 
親子連れや女性同士の客、年配のカップルなどお客は様々だが、
昼間からかなりの金額を食事に使えるクラスの空気を纏っている。
 
で、それがこの店の持つ雰囲気をさらに醸成するのか、
独特の心地よさを感じさせた。
 
しかし・・・・
ビール2杯と2コースランチで8000円+
 
高いと見るべきか、贅沢と切るべきか・・は解らないが、
パンとソースに魅了された私には。不満の欠片も見つける事はできなかった。
  

 
「トラディショナルダイニング ラ ブラスリー」
〒100-8558 東京都千代田区内幸町1-1-1
帝国ホテル東京 帝国ホテルタワー地下1階
TEL.(03)3539-8073

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