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2006-10

シフト


 
随分と生き長らえたものだ。
 
一歩踏み違えるとそのまま・・・の道を
自分の勘だけを頼りに駆け抜けて4ラップ。
 
多くの人と出会い、
多くの事を知り、
多くの事を学んで、
多くの何かを刻んできた。
 

 
今、また、
ざわざわとした感触を心の中に見つけて、
何かを刻む準備に入った・・と知る。
 
どこかで凍り、動かなくなって久しい心が、
忘れてしまったはずの記憶と共に蘇った熱さで弛み、
わぁ・・・っと叫びたいほどの何かが、心の真ん中に芽生えている。
 

 
しかし
その何かは・・・
 
容易に姿を見せない。
 
肌触りも匂いもわかっているのに、
手で触れる事のできないもどかしさが苛つきを生む。
 
まぁ・・・良い
 
このモヤモヤとした何かは、
形を得るまでに様々な攻撃をしかけるだろうが、
その代わりに、何かをちゃんと残していく事は、わかっている。
 
たとえ足下も行く末も見えなくても、
そこにはちゃんと行くべき道がある事は、わかっている。
 
だから、
足を前に出して、
道が照らされている場所まで、
自分の信じる方向へ歩いていこう。
 

プレッシャー


 
「さっきのコメントで間違いがありました」
 
「え? どこ??」
 
「38社と言うべきところを37社と・・・」
 
「その後ですぐ訂正しましたよね?」
 
「もう一回いいですか・・・?」
 
 
ハイハイ、わかりました。
撮り直します。
 
行政の広報番組は間違いが許されない。
そのため、細かいチェックは必要で、通常問題無い・・と思える事でも、
広報担当者にとって問題だとなれば、収録はやり直しになる。
 
で、こんなやりとりはいつもの事なのだが、
この日はいつもと違う事が1つあった。
 
通常使っているスタジオが使えず、
パブリックスペースの中にある特設スタジオを使っている事だ。
 

 
しかもこの日は副調整室(サブ)が使えないため、
固定カメラを含めて5台のカメラを使い、全てのカメラの映像をテープで収録する事になっていた。
(後日あたかもスタジオ収録したように見せるための編集が必要となる)
 
そしてさらに、そのスタジオが使用できる時間はギリギリに設定されていたから、
細かいチェックや撮り直しをしていると時間切れになってしまう・・・・
 

 
 
「・・・あと10分か・・・」
 
「最後のブロックは正味4分無いから、
 どうにかなりますよね?」
 
「間違いが起きなければねぇ・・・
 ま、後編だから、どうにかしちゃうけど」 (後編=後で編集する事)
 
 
フロアディレクターから収録準備完了の合図が来る。
問題は、悩んでるクライアントだけだが、こういう場合はどんどん回してしまうのが私流だ。
(最後のブロックが撮れないまま時間切れしたら洒落にならない・・・(^_^;))
 
 
「回しちゃうよ」
 
「わかりました」
 
「くぅ・・・・ワクワクするなぁ・・・」
 
「え?」
 
「あはは、こういうギリギリの状態って、好きなんだよねぇ」
 
 
仲の良いカメラマンが半分呆れ顔で、コッチを見る。
 
締切直前や、タイムアップ寸前で火事場の馬鹿力を引き出す事が、
私としては凄く気持ちの良い事でもあり、正直ワクワクしてくるのだ。
 
プレッシャーがかかると上手く動けない人がいるが、
私の場合、プレッシャーがかかってやっとキビキビ動ける・・・らしい。
 
そういう意味ではエンジンはレッドゾーンギリギリをキープするような回し方が好きだし、
狭い所をすり抜けたり、ヤバイ・・と感じる直前まで自分を追い込む事が楽しいのだ。
 
ただ・・・・
ハイリスクな分、しくじると取り返しがつかないから、
なるべく無理の無い大人らしい行動に終始しようと考えてはいるし、
実際、そういうように振る舞っているのワケで・・・(^_^;)
 
 
そして仕事は無事、5分の余裕を持って終了した。
 

虫の音


 
夜の訪れが早くなり、
風が温もりを奪うようになる。
 
もう・・秋だな・・・
 
と思った途端、虫の音があちこちの溢れている・・と気付く。
 
都会のコンクリートだらけの町なのに、
やっぱり虫の音が聞こえている。
 
最後の一花を咲かせようと鳴いているのかその勢いはかなり力強いが、
私にとっては来る冬への序章を飾る開幕ベルのように聞こえる。
 
やるだけやった後は刈り取って収穫を祝い、
新たな種蒔きと冬将軍との戦いに備える時。
 
だからある意味、
1年は秋の訪れと同時に終わる・・と言ってもいいだろう。
 
来年は、どれだけ頑張れるのだろう・・・・ねぇ(/–)/

秋の気配


 
急に涼しくなり、
気付けば空気が澄んで、
すっかり秋の色に染まっている空。
 
陽の角度のせいだろうか・・
 
この立体的で少し固い感じのする景色が、
秋の色だ・・・と目に訴える。
 

 
何度となく秋を迎えてきてはいるが、
今年はいつもと違って見える。
 
そう・・・
だからシャッターを切ってみた。
 

 
ほんのちょっとの時間、ファインダーに集中するだけで、
言葉では表現できない気持ちを吐き出す事ができる。
 
すぅっ・・と息を吸い、
ゆっくりと目を閉じて、
波の音や風の声を聞く。
 
トクトク・・・と鼓動を打つ自分の心臓の声さえ聞こえてきたら、
ゆっくりと目を開けると、世界が違う色に見えた。
 
やっぱり、時間を作ってでも、
撮る・・という行為をしないといけない・・・ようだ。
 

Lonely Wolf

  • 2006-10-06 (金)


 

見知らぬ町を電車で走っていた。
 
乗客は皆疲れた顔をして、物も言わない。
 
車輪がレールを削る音が耳障りで
どっかの車軸がずれてるように車両が揺れる。
 
車内の空気は澱み、鼻を突く臭いが満ちていて、
背中には気持ち悪い汗が滴って落ちた。
 
何処へ向かっているのかわからないから、
余計に苛つくのだろう・・・
 
どこかの駅に着いた時、
無意識に飛び出した。
 
 
誰も居ないホームに1人。
 
辺りに色はなく、
赤い列車の尾灯だけが目に刺さる。
 
あんなに嫌だと思った車内の明かりだけが、
妙に暖かく楽しげに見えるのは何故だろう。
 
ま・・・
そんなもんだよ・・・と独り言。
 
自分が望む生き方に、
後悔は必要ない。
 
例え今、一人きりで立ちつくしていたとしても、
どこにも帰る場所が無かったとしても、
自分が一番自分らしい歩き方をしているのなら、
寂しさもまた、自分らしい生き方の代償だろう。
 
 
去りゆく列車を見ながら、
それでも不安に押しつぶされそうな自分を見つめていた。

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