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魔法の絨毯

 いつも思っていた。

 この苦しみだけの生活から
 逃げ出す事を。

 だが、
 その手立ては、若き自分には無かった。

 受け入れる事と、
 どこかにほんの少しだけある苦しみを伴わない「何か」に喜びを見出す事・・・
 それだけが明日へ向かう技術として備わっていく。

 そしてある日、
 2つの輪を持つ乗り物を手に入れた。

 

 

 日常から逃げ出す事も、
 知識欲を満たす事も、
 その乗り物はいとも容易く実現する。

 そしていつしか、
 自らの力で、自らの方向を定める事だけが、
 己というものを確かな物にしてくれる・・・と気付いた。

 

 振り返れば、
 今の自分は随分と情けない。

 日々、どうでも良い事に腹を立てたり、
 無駄な事に力を使いながら、更なる何かを求めたりしている。

 

 幼子の魔法の絨毯は、
 景色の中で輝いている。

 それはまるで、
 夢と希望を燃料にして、どこまでも走っていけそうに、
 私には見えた。

 

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