Bowjackmoore – Anotherside
一周忌
- 2023-10-08 (日)
- Photo Essay
「おぉ、よく来たな。
お前デカくなったか?」
「お疲れ様です。
何も変わってないと思いますよ、腹以外。」
「そうかぁ
なんだか遠くから歩いてくるお前を見るとデカく見えるんだよなぁ」
「態度が?」
がははは・・・
屈託無い笑顔を見せられて、嬉しくなる。
カネサカビルの入口に置いてあるベンチに座る大将は、
フラッと寄った私にそんな風に声をかけてくれた。
「ちょっと行くか?」
「はい」
向かうのはカネサカビルの裏にあるミントンハウス。
クラブ御用達のジャズバーで、訪れる多くのライダー達を誘って話を聞く場所でもあり、
大将がちゃんと話をしたい誰かに同伴を求める店でもある。
クラブには、毎日のように日本全国からライダーが訪れた。
大将が居れば、クラブハウスに上げるか、ミントンハウスに誘う。
その時クラブハウスに地元メンバーがいたら随行し、勘定の面倒をみるのは暗黙の了解事項だった。
1日に1名なんて数じゃ無いから、それに付き合うだけでも大変な事。
その都度コーヒー1杯を振る舞うだけでもかなりの費用がかかるのだ。
クラブハウスに集っている人達はクラブ会費で賄っても足り無い事を知っていたので、
出せる人は自主的にそれをカバーしてきたのだと想像できた。
大将は、1対1で話をする。
相手の人となりを瞬時に理解し、無意識に欲しがる言葉を紡ぐ。
年に1回ずつ関東と関西でライダースミーティングを開き、多くのライダーと向き合っていた。
大将はそんな出会いの中で、壮大な遊びにはまるピースを見つけると、
クラブを背負う覚悟を問いながら、メンバーへの路を拓く。
そして、多くのライダーがクラブの看板を背負う事になった。
「横浜で飯田繁男をとことん偲ぶ会」が10月8日に開催された。
命日である15日よりちょっと早い開催だが、連休ならば参加しやすいと主催者は考えたのだろう。
大将が名付けた「イエローマン」も用意され、ジャックターにも似た味わい&強さを味わっていると
大将との会話を思い出す時間が訪れた。
「イエローマン」のレシピは、ロンリコ151とグレープフルーツジュースを1:1で合わせ、
クラッシュドアイスを入れたオールドファッションドグラスに注ぐ・・だったと記憶している。
だからこれじゃ無いんだ・・なんて無粋は言わず飲むと、
その味わいと酔いの中から様々なシーンが蘇った。
去年の11月19日に開催された送る会の時よりも、
会場には笑顔が多かった。
懐かしい顔を見て挨拶すると、離れていた時間を埋めるように会話が弾む。
「前に見た時は顔色悪かったのに、今日は滅茶笑顔ですやん?」
「あれ、そう?
リタイヤして、すっげ〜寝られるようになって、元気になれたのかな?」
不思議な集団だと思う。
ちゃんと話をしたのは何年ぶり?って思うくらいにご無沙汰でも、
会えばすぐに打ち解けられる人達が集っている。
あらゆる職業の人達を集めるんだ・・と大将が言ってた事もあったけど、
確かにあらゆるタイプの人達が揃っていて、独特のクラス感を持っているのは面白い。
「最近の若いヤツって、皆格好いいよな。
何でだろうな。
いつの間に俺みたいなジャガイモ顔の日本人がいなくなっちゃったんだろうな」
「食べ物ですかね」
「食べ物って言えばな。
日本人の食生活を変え、自国の穀物を買わせたアメリカな。
あれは日本が再び戦争できないようにするための策だってわかってるか?」
「自給率を下げて、兵站を破綻させるって事です?」
「そうだ
今の日本は自給できないから、一時的な戦闘はできても戦争はできないんだよ」
どうして若者の風貌の話から戦争の話へ移っちゃうんだろう・・・
と思うけど、大将の話は取り留めなく脱線しつつも、物事の見方の変え方を教え
視野を広く高く持て、と言われているように感じるのも常だった。
人間の幅は、違う世界をどれだけ知っているか、違う社会をどれだけ持っているか、
という事をわかりやすく解説したり、経験させてくれたのは大将であり、
大将が選んだ人達が作るケンタウロスという社会だった。
その社会を大事にするためにも看板という記号をつけて、集って、
お互いの経験を語り合いながら楽しんでいく時間を、共有するのは心地よい。
そして自分の立ち位置を、日常とは違う地点から見ることができるから、
離れる事ができなかったのだと思っている。
「大将って、個性的な人を集めてくっつけて、どんな化学変化が起きるかを楽しんでるよね」
「そういうとこ、ありましたね」
「何かの案件についてどう思うか問い、案の実行に一番反対するヤツにやらせる・・
なんてお茶目なとこもありました」
「それって大将、よく言ってましたけど、『反対するやつは問題点がわかってるからやらせる』
って説明してくれて、会社でもそんな視界から人を選ぶ事、やらせていただきました」
クラブに所属する人、クラブに近くて一緒にいる人、興味を持って初めて会う人、
それらは全部、大将の仕掛けなんだろう・・と思えてしまう。
兄弟達と話をしていると、その仕掛けの面白さと将来を想像する意味が重くて、
よくぞこんなにも兄弟を集めたな、と今さながらに思わされた。
自分は、人付き合いが苦手です。
できる事なら、ずっと1人で生きていたと思っています。
でも、社会の中でしか生きられないのが人間で、
嫌でも家族という社会や職場という社会に属して生きる事が多い現実の中で、
糧を得るために生きる社会を客観視するためには、
価値観の違うフラットな関係が築きやすい社会を持つべきだと教えてくれたのも大将だった。
そして、大将は人と人を繋げていく事の面白さと大切さも教えてくれた。
人付き合いが下手のレベルが低すぎる自分でも、
仕事でそんな役割を担う事になった時、どうにか対処できるようになれたのは
MCの兄弟達のおかげだと感じている。
一時期、大将との距離が近づき過ぎた事があった。
そして近すぎる事で見える何かに説明できない許容できない感情が生まれ、
悩んでいた事もあった。
今から思えば、自分自身が往くべき道を見失っていたのかも知れない。
同時に、自分以外の誰かに敷いてもらった線路を走るのだけは嫌だった事も、思い出す。
だけどそんな時には何故か突然、その関係が変えられてしまう事象が起きる。
そんな事が繰り返し起こるのが私の人生らしい。
今は冷静にその頃の事を思い出して、考える事ができる。
時の流れの中で失ったり出会ったりして得た経験が、今の生き方を支えている。
大将と1対1での関係でMCに属する事になった自分としては、
一人きりで自由に動けるバイクが好きな自分としては、
一期一会を大事にしながらも、自分の道は自分で探していくしかないのだろう。
MCの皆と一緒に過ごす時間の豊かさと楽さは素晴らしい、と再確認。
大将、貴方の企みは、それなりに実を結んでいると感じます。
もうお会いできないのは残念ですが、貴方の言葉は心に残っています。
来年は関西方向で開催したい、との話も聞こえました。
また、兄弟達との会話を楽しめるよう、精進して生きていきますね。
R.I.P.
R.I.P.
- 2021-02-17 (水)
- Photo Essay
The greatest gift you can give someone is your time because when you are giving someone your time, You are giving them a portion of your life that you will never get back.
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