Home > 自己主張 > 渚園

渚園

今年は行くよ
あの夕日を見に。
 
 

 
友人が主催する宴に、毎年ふらっと顔を出し、
その都度綺麗な夕焼けを見て、
懐かしい友と語らいあって、
帰る。
 
そんな事がもう何度、続いたのだろう。
 
そして今年も・・・
 
 

 
ヤツと一緒に来てたのは何年前だったろう・・・
 
酒がすっかり飲めなくなってしまったヤツは自分から運転手を買って出てくれて、
私は宿泊組と一緒に酒を酌み交わしていて・・・
 
ホストはそんな私等を横目に料理に勤しみ・・・
 
 

 
 
「ここってさぁ・・・
 飛行機の通り道かなぁ」
 
「そう言われれば、飛行機雲が多いね。」
 
「あ、飛行機、綺麗に光ってる」
 
 

 
今年は秋雨前線停滞の中、奇跡的に晴れた1日だった。
 
ここに来る時は、
例え途中が豪雨でも、
必ず雨が止む。
 
だから参加者が居ない・・と聞いても、
自分だけは顔を出すのは当然だった。
 
 

 
 
「毎年、この夕日、見に来たいな」
 
「運転手は君だ」
 
「あはは。
 なんかさ・・・いいよね」
 
「うん。
 独特の穏やかさがあって、いいね」
 
「身体がもうちょっと言うこと聞けばなぁ・・・」
 
「充分、動いてんじゃん。
 ドライバーの仕事あるんだからやれよ」
 
「うん、そうだね。」
 
「腕が心配なら、運転手頼まないよ。」
 
「うん・・・
 来年も来れるかな」
 
「来年は智の車で来よう」
 
「手放さないように、働けって事?」
 
「あぁ・・
 大丈夫だよ」
 
「・・・・そうかなぁ・・」
 
「・・・そう、だよ。」
 
 
その年取った夕日は、優しい色をしていた。
 
その後何度か撮ったけど、いつも冷たい色しか出なくて、
フィルムじゃないとダメなのか?・・・と悩んだりしていた。
 
智成は・・・
 
その苦労を知らない。
 
 

 
 
今年の空は、優しい色をしていた。
 
何か重くのしかかっていたモノがその空に吸い込まれてしまったように、
見続けているだけで、心が軽くなった。
 
きっと、
この空を見るために・・・
 
私はここに、
来たのだろう。

コメント:0

コメントフォーム
Remember personal info

Home > 自己主張 > 渚園

検索
フィード
メタ情報

Return to page top